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https://digital.asahi.com/articles/DA3S14669564.html

本州で酪農、苦しい中でも奮闘

全国の生乳生産の半数超を占める北海道の酪農では大規模化が進む。

　北海道東部の別海町。町の人口の７倍に相当する１１・５万頭の乳牛がいる。浦山宏一さん（６０）は２０１６年、株式会社「大地の雫」を立ち上げた。１７年には国の補助金を活用して約３千万円の搾乳ロボットを８台導入し、牛を４００頭から１千頭に増やした。「生産計画などの管理業務が多くなった。経営者になった実感がある」

　生き物を相手にする酪農家は１日２回の乳搾りやエサやりなどで３６５日休みがない。担い手不足になっている一因だが、ロボットの導入で大きく変わった。牛舎の一角にあるゲート内で牛がエサを食べている間に、ロボットがアームを伸ばし、四つの乳頭の位置をセンサーで確認し、吸引管で搾乳する。エサ目当てに牛が自らゲートに入るため、人が誘導する必要はない。

　オリックスの子会社で搾乳ロボットの輸入・販売を手がけるコーンズ・エージーによると、これまで販売したロボット約９００台のうち８割近くが北海道向けだ。酪農家１戸あたりの牛の数が他の都府県の２倍超の約１４０頭と多く、投資資金を回収しやすい。規模拡大を後押しする国の補助金制度が始まった１５年度以降、年１００台のペースで売れているという。

　一方、北海道以外の地域では大規模化がなかなか進まない。国の統計によると、都府県の酪農家は１９年に９０７０戸と、２０年前（２万５２００戸）の３分の１近くに減った。北海道のように自前でエサの牧草を育てたり、臭いの原因となるふん尿を処分したりする土地の確保が難しい。後継者も見つからず、廃業に追い込まれるケースが目立つ。

　そんな中でも活路を見いだしている酪農家がいる。東京都瑞穂町で牧場を経営する清水陸央さん（６２）。都府県は４０頭未満の小規模経営が多い中で、北海道の酪農家に匹敵する約１３０頭を飼育する。瑞穂町や青梅市の畑地９ヘクタールを借り受け、大量に出る牛のふん尿を堆肥（たいひ）として使い、牛のエサに使うトウモロコシを育てる。輸入に頼る牧草も価格の安いものを混ぜるなど工夫するが、広大な土地で自ら牧草を育てられる北海道と比べるとコストは２～３割高い。

　１８年に息子夫婦が牧場に隣接するジェラート店を開店し、夏場は駐車場が満杯になるほどの人気だ。清水さんは「ジェラートの支えがなければ東京で酪農は続けられなかった。光熱費や土地代も高く、本州で酪農をするのは明らかに不利だ」。それでも、酪農への興味を持ってもらおうと、搾乳体験で毎月小学校を訪れる。搾乳ロボットも近く更新する予定だ。「新技術や利益の出る加工への投資に国や自治体がしっかり支援してくれれば、十分未来がある」