愛媛が誇る「ポンジュース」原材料の約半分がブラジル産のオレンジだった🍊

オレンジ果汁の価格高騰は、原産国でのオレンジの不作が背景にある。

日本国内の果樹産業を支援する公益財団法人「中央果実協会」（東京）によると、世界の全輸出額の４分の３を占めるブラジルで近年、かんきつ類の品質低下を招く「カンキツグリーニング病」が蔓延（まんえん）し歴史的な不作が続く。こうした傾向は数年は続くとみられるという。

農林水産省の「農林水産物輸出入統計」によると、オレンジジュース輸入量は令和２年の６１５６万リットルから３年は３３９５万リットルに激減。
５年は５３４０万リットルまで持ち直したが、１リットル当たりの価格は円安の影響もあって上がり続け、５年は２年の２倍に迫る４９１円まで高騰した。

こうした状況のなか、国内飲料メーカーではオレンジジュースの販売休止に踏み切る企業も出てきた。
アサヒ飲料は昨年１２月からオレンジジュースの「バヤリースオレンジ」（１・５リットル）を、
ヤクルト本社は今年４月から「オレンジジュース」（１２５ミリリットル、２００ミリリットル）をそれぞれ販売休止に。森永乳業も６月から「サンキスト１００％オレンジ」（２００ミリリットル）を１０円値上げし、原料がなくなり次第、販売休止するという。

■産地を守る　ポンジュースはやめない
ただ、えひめ飲料総合戦略部の越智俊介部長は「オレンジ果汁が高騰したからといって、当社はポンジュースの生産をやめるわけにはいかない」と強調する。
その思いは、みかん産業の発展という同社創業の精神と深くかかわっている。

ポンジュースは同社の前身である県青果販売農業協同組合連合会が昭和２７年に初めて商品化した。当時の桐野忠兵衛会長が「愛媛のみかん産業をどう発展させるか」という問題意識を持って米国のジュース工場を見学したのがきっかけという。

発売当時から原料には農家で収穫されるみかんの中でも、傷があったり小さすぎるなどして生果のままでは販売できない規格外品を搾った果汁を使用。
昭和６３年のオレンジの輸入自由化決定を受け、翌年からは消費者の嗜好の変化に合わせオレンジ果汁をブレンドし、全体の出荷量を増加することでみかん果汁の消費拡大とそれにともなう農家の収益安定に寄与してきた。
平成１５年に農協組織から分離し株式会社として設立、２５年に全国農業協同組合連合会（全農）の１００％子会社になるなど経営体制は変わっても、愛媛のみかん産業発展に向けた思いは７２年前のポンジュース発売以来変わっていない。
オレンジ果汁の価格高騰を契機としたポンジュースのリニューアル。
みかん果汁の消費拡大という観点からみれば、追い風ととらえることもできる。
ただ、農家の高齢化や後継者不足で、決して供給は潤沢ではないという。
越智部長は「よりみかんのおいしさが伝わる商品になったポンジュースを通し、愛媛のみかんのおいしさを再確認してもらいたい。それが農家の収入や担い手確保の一助となり、ひいてはみかん産地を守ることにつながっていけば」としている。（前川康二）