オッサン一人でファミレス行ってもええの？

https://news.yahoo.co.jp/articles/3245d39fc8a2bcaca80b3c8e3bc154826dcdccec

すかいらーくHD、衝撃の「大量閉店」は「起死回生の一手」かもしれない

8月12日に発表された外食チェーン大手、すかいらーくホールディングス(以下、すかいらーくHD)の2022年12月期の連結業績予想によると、当初は40億円の黒字予想だった当期利益を20億円の赤字に下方修正するなど、かなり厳しい状況にあることが明らかになった。
　これを受けてすかいらーくHDはなんと、「ジョナサン」や「ガスト」といったファミレス100店舗を閉鎖することも発表。すかいらーくHDの国内グループ店舗数は3013店(2022年6月30日時点、店舗数は以下同)となっており、そのうちの100店舗となると約3％にあたる。

　経営の根幹が揺らいでいるというほどではないだろうが、驚きのニュースだったことは間違いなく、ネット上でも心配の声が多く寄せられた。

　そこで今回は、農業・食品・外食に携わるプロ向けWebサイト「Food Watch Japan」の編集長・齋藤訓之氏に、ファミレス業界大手すかいらーくHDがこの大量閉店に至った理由や、今後の予想などを伺った
　まずは、すかいらーくHDが現在の大手外食チェーンに至るまでの歴史を簡単に振り返っていただこう。

　「1970年7月に1号店となる『すかいらーく 国立店』が誕生したときは、車での来店を前提としたコーヒーショップスタイルでした。シティホテルの朝食メニューに当たるものを、営業時間中いつでも注文できるメニューとしてそろえ、コーヒーは何杯でも注いでくれるアメリカ風のお店でしたが、日本はアメリカに比べて平日に車で移動する人が少なく、路線変更を強いられました。

　そうして生まれたのが、“ファミリーレストラン”というスタイル。日本人にはまだ高級食のイメージが強かったハンバーグなどの料理を、比較的安価で提供し、土日のファミリー層を狙ったこの戦略が見事大成功します」

　そんな業界のフロントランナー、すかいらーくHDを語るうえで欠かせないのが「ガスト」の誕生だという。

　「それまでファミレス業界では、一人当たりの客単価は1000円と言われていました。ですが、すかいらーくHDは市場調査の結果、一人当たりの客単価が800円台にあるということを見抜きます。そして、1992年に客単価を800円に設定した新たなファミレス『ガスト』が誕生するのです。

　今や多くの飲食店で採用されているドリンクバーを、本格的に導入して人気を勝ち取ったのが『ガスト』でした。そのうえ『ガスト』をスタートさせてからすぐ、『すかいらーく』の半数以上を1年で『ガスト』に転換するという大改革を実行し、業界に衝撃を与えました」
コロナ禍やインフレで大打撃のファミレス業界
　時代の先を見抜く戦略で発展してきたすかいらーくHDだが、話題となっているように100店舗閉店という苦境に立たされている。この理由はズバリ何なのだろうか。

　「やはりコロナ禍で客足が遠のいたことで、収益回復が難しい店舗を閉めたということではないでしょうか。コロナ禍で大打撃を受けた外食業界のなかでも、ファミレスは店内で食べるスタイルなので、どうしても消費者の間で感染への警戒心が強まり、大きなダメージとなりました。

　ですが、コロナ禍の影響はファミレス業界全体にダメージを与えており、“すかいらーくHDだけが大打撃を負った”ということではありません」

　ファミレス業界全体が打撃を受けたなかで、今回すかいらーくHDだけが100店舗の閉店に至った。その理由はどこにあるのか。

　「正直なところ、ここは私には分かりかねる部分です。ただ近年は、客単価800円台で改革を起こした『ガスト』のメニュー価格を、消費者の利用頻度が下がらない範囲でじわじわ上げるなどしていたので、苦しい状況なのは間違いないでしょう。

　すかいらーくHD全体の国内店舗数は約3000店舗で、そのなかの100店舗というのは少なくない数字です。しかし、ここからは憶測になりますが、同業他社の他チェーン店が閉店を避けようと、経営が成り立たなくなるギリギリまで粘っているのに対して、すかいらーくHDは先手を打って、早めに“損切り”をしたという可能性もあります。

　そう仮定すると、同業他社に先行して大胆な大量閉店という決断に至ったということになり、苦しいながらも、まだどこかに少し余裕を感じさせる印象があります」

　そうなると、今回の大量閉店で残された店舗や店員たちの処遇はどうなるのか。

　「店舗に関して言えば、一般的にチェーン店業界は物件を所有せずに賃料を払って利用しているので、通常どおり賃借契約を終了し、その物件から出ていくことになるでしょう。